墓石に刻む文字は故人の名前や家名、法名などを永く後世に残すための大切な記録であると同時に全体の印象を決定づける要素でもあります。
そのため、書体の選択は慎重に行う必要があるのです。
もっとも一般的に使用されているのは楷書体で読みやすく整った印象があり、格式ある雰囲気を大切にしたい場合に適しています。
対して行書体はやや柔らかく流れるような筆運びが特徴で、温かみや親しみを持たせたい際に好まれる傾向にあります。
もう一つの代表的な書体である隷書体は古風で重厚感があり、歴史や伝統を重視した墓碑にふさわしいとされています。
最近では個人の価値観や美意識に基づいたオリジナルの字体を希望する方も増えており、デザイン性の高いモダンな字体や手書き風の文字を採用するケースも見受けられます。
ただし視認性が損なわれないよう、墓石に刻む文字で彫刻の仕上がりや石材との相性を踏まえて選ぶことが求められるのです。
筆跡の一つひとつにも意味が込められるため、家族で相談しながら慎重に決めることが大切です。
文字の配置とあわせて左右や上下のバランスも考慮され、最終的にはデザインと実用性が両立する形で選定されるのが理想です。